紅葉を求めて、南アルプス深南部の常光寺山へ
今回は静岡県浜松市天竜区水窪町にある常光寺山へ。目的は秋の紅葉を楽しむこと。南アルプス深南部に位置するこの山は、標高1,438m。山深く、静かな自然が残るエリアで、紅葉の時期には美しい景色が楽しめる山として知られている。
登山口へのアクセスは、水窪方面から天竜スーパー林道を北上するルート。山住神社を少し過ぎたところにある駐車場を利用した。
天竜スーパー林道は、山深い地域を走る林道で、車を走らせているだけでも自然の豊かさを感じる。市街地から離れ、標高を上げていくにつれて、周囲の景色も少しずつ山深いものへと変わっていく。
この日はあいにくの曇り空。青空の下で紅葉を楽しむという理想的な天気ではなかったが、山の雰囲気を楽しむには悪くない。
準備を整えて、いよいよ登山開始。

樹林帯を歩き、雲海を眺めながら山頂を目指す
登山口からしばらくは樹林帯の中を歩いていく。

周囲は静かな森。木々に囲まれた登山道を進んでいくと、ふと視界が開ける場所がある。
この日は雲がかなり低い位置まで下りてきており、山々の間には雲海が広がっていた。

晴天の日の眺望ももちろん素晴らしいが、こうした雲に包まれた山の景色もまた格別だ。山の稜線が雲の上に浮かび上がり、普段とは違った幻想的な風景を見せてくれる。
特にこの南アルプス深南部の雰囲気はとても良い。
観光地化された山とは違い、人の気配が少なく、自然そのものが残っている感じがする。深い森と幾重にも重なる山並み。歩いているだけで、日常から遠く離れた場所に来たことを実感できる。
ただ、紅葉を期待して来たものの、登山道の前半ではまだほとんど色づいた木々は見られない。
少し時期が早かったのかもしれない。
それでも、静かな森の中を歩く時間は気持ちが良い。紅葉だけが登山の楽しみではない。こうした山深い自然の中に身を置くこと自体が、山歩きの魅力だと思う。
いくつものピークを越えて、少しずつ紅葉が現れる
常光寺山までの登山道は、ひたすら登り続けるという単純なコースではない。
途中にはいくつかのピークがあり、登っては下り、また登り返すというアップダウンを繰り返していく。
最初に通過するのが、標高1,144mの名もなきピーク。
続いて標高1,173mの扇平山。そして標高1,312mのピークへと進んでいく。



こうした小さなピークを一つずつ越えていくのも、このコースの特徴だ。
標高が上がるにつれて、周囲の景色にも少しずつ変化が出てくる。
前半ではほとんど見られなかった紅葉も、徐々に姿を見せ始めた。

緑の中に黄色や赤が混じり、秋らしい山の景色になってくる。木々の色づき方には場所によって違いがあり、きれいに色づいているところもあれば、まだ緑が多く残っているところもある。

そして、途中で視界が開けた場所からは、これから向かう常光寺山の姿が目の前に見えてきた。

山頂が見えると、そこまでの距離や道のりを意識するようになる。まだ先は長いが、目的地が見えると気持ちも前向きになる。
途中には登山道の一部が崩落している箇所もあった。
ただし、今回歩いた際には通行に大きな問題はなく、慎重に進めば通過できる状態だった。山の自然環境の中では、こうした崩落箇所に遭遇することもある。足元を確認しながら安全第一で進みたい。
また、この周辺からは南アルプス深南部の山々を見渡すことができる。
遠くまで連なる山並みを眺めていると、改めてこのエリアの山深さを感じる。華やかな観光登山とは違う、静かで奥深い山の魅力がある。
ナダクマシロ山を経由して常光寺山へ
標高1,312mのピークを越え、さらに進むとナダクマシロ山に到着する。
標高は1,418m。


山頂からの眺望はないものの、周囲を木々に囲まれた静かな場所で、独特の雰囲気がある。
こうした山頂もなかなか良いものだ。展望が素晴らしい山頂も魅力的だが、深い森の中にひっそりと存在するピークには、また違った味わいがある。
ここまで来れば、常光寺山までもう少し。
しかし、ここからが意外と大変だった。
ナダクマシロ山からは結構急な下りが続く。せっかく標高を稼いできたのに、一度大きく下っていく。そして、その後は常光寺山に向けて再び登り返すことになる。
登山ではよくあることだが、目的地が近づいてからのアップダウンはなかなか堪える。
それでも一歩ずつ進み、ようやく常光寺山の山頂に到着した。
標高1,438m。
今回の登山の目的地だ。


常光寺山山頂。ガスに包まれた深南部の山々
山頂に到着したものの、やはり天気は曇り。周囲にはガスがかかっており、すっきりとした大展望とはいかなかった。
それでも、目の前には南アルプス深南部の山々が広がっている。
幾重にも重なる山並みは、どこまでも山が続いているような景色。ガスが流れることで、山々の輪郭が見えたり隠れたりする。
晴天の眺望とは違うが、これはこれで非常に味わい深い。
そして、山頂周辺では紅葉がきれいに色づいている場所もあった。
赤や黄色に染まった木々が、深い緑の森の中でよく映える。やはり秋の山は良い。


ただ、紅葉の名所ということで期待していたこともあり、今回は少し残念な部分もあった。
山全体が鮮やかに色づいているという状態ではなく、紅葉が見られたのは一部に限られていた。もう少し時期が進めば、さらに美しい景色になっていたのかもしれない。
とはいえ、紅葉だけを目的に考えると少し物足りなさはあったものの、山そのものの魅力は十分に感じられた。
静かな樹林帯、雲海、山深い稜線、そしてガスに包まれた南アルプス深南部の山々。
常光寺山は、派手さはないが、じっくりと自然を楽しめるとても良い山だった。
帰りに山住神社へ。樹齢1300年の大杉に圧倒される
下山後は、登山口からも近い山住神社に立ち寄ることにした。

山住神社は、浜松市天竜区水窪町の標高約1,107m、山住峠に鎮座する歴史ある神社だ。
その起源は古く、和銅2年(709年)に伊予国(現在の愛媛県)の大山祇神社から神様を迎えて祀ったのが始まりと伝えられている。
また、山住神社は「お犬様」と呼ばれる山犬、つまり狼への信仰でも知られている。
戦国時代の元亀3年(1572年)、徳川家康が三方ヶ原の戦いの際に山住神社で武運長久を祈願したと伝えられている。その後、家康から二振りの刀剣が奉納されたという歴史もある。
山深い場所にある神社だが、古くから地域の人々に大切にされてきた場所なのだ。
そして、境内に入るとまず目に飛び込んでくるのが、巨大な杉の木。
樹齢は約1,300年ともいわれる大杉で、浜松市の文化財紹介では樹齢1,260年余りとされ、静岡県指定天然記念物にもなっている。


実際に目の前に立ってみると、その大きさには圧倒される。
幹の太さも高さも桁違い。1,000年以上もの長い年月、この場所で風雪に耐えながら生き続けてきたと思うと、何とも言えない感慨がある。
戦国時代よりも、さらに昔からここに立っているのだ。
まさに大自然の生命力そのもの。
しばらく見上げていると、何か大きな力をもらえるような気がする。せっかくなので、しっかりとパワーをいただいてきた。
山住神社は、常光寺山を訪れた際にはぜひ立ち寄ってほしい場所だと思う。
まとめ|紅葉だけではない、常光寺山の魅力
今回の常光寺山登山は、紅葉を目的に出かけた山歩きだった。
期待していたほどの紅葉には少し早かったようだが、それ以上に印象に残ったのは、南アルプス深南部ならではの山深い自然だった。
樹林帯の静かな登山道、低く垂れ込めた雲、山々の間に広がる雲海。そして、いくつものピークを越えてたどり着く山頂。
展望がすっきりしない曇り空でも、十分に楽しめる山だった。
ナダクマシロ山を経由するアップダウンのあるルートは、歩き応えもある。常光寺山だけを目指すというよりも、いくつものピークを越えながら、南アルプス深南部の自然をじっくり味わう登山という印象だ。
そして、下山後に立ち寄った山住神社も素晴らしかった。1,300年もの時を生きてきた大杉の迫力は、一見の価値がある。
紅葉は少し物足りなかったが、山の雰囲気は最高だった。
次回はもう少し紅葉の進んだ時期に訪れてみたい。
やはり、山は何度訪れても新しい発見がある。
今回も良い山歩きができた。