
2月中旬、澄み切った青空に誘われて、伊豆半島を南北に貫く「伊豆山陵歩道」を歩いてきた。スタートは西伊豆スカイライン上の**仁科峠。ゴールは富士山の大展望で知られる達磨山レストハウス**。距離は約19km。伊豆の山らしいなだらかな稜線をつなぐロングトレイルだが、実際に歩いてみるとアップダウンが連続し、想像以上に歩きごたえがある。
仁科峠から始まる大展望




標高約900mの仁科峠に立つと、まず視界いっぱいに広がるのは駿河湾の蒼。冬の空気は透明度が高く、海と空の境界がくっきりと浮かび上がる。振り返れば天城方面の山並み、進行方向にはなだらかな稜線がゆるやかに波打つ。そして雪化粧の富士山が目の前にどーん”と。さらに南アルプスも綺麗に見える。今日は快晴、風も穏やか。絶好の稜線歩き日和だ。
歩き始めは笹原に覆われた広い尾根道。視界を遮る樹林が少なく、常に開放感に包まれている。足元はよく整備され、危険箇所もほとんどないが、細かなアップダウンが続くためペース配分が重要だ。序盤で飛ばしすぎると、後半に確実に脚にくる。
稜線のリズム、アップダウンの連続





このルートの魅力は、なんといっても「稜線のリズム」にある。登っては下り、また緩やかに登る。その繰り返しが心地よいテンポを生み出す。ピークごとに振り返れば、歩いてきた道のりが一本の線となって見える。ロングトレイルならではの達成感だ。
途中、いくつかの小ピークを越えていくが、どれも標高差は100m前後。それでも距離が長いため、累積標高差はじわじわと効いてくる。(最終的に累積標高は、1130mあった。)特に中盤以降は太腿と臀部に疲労が溜まりやすい。冬場とはいえ、日差しは強い。こまめな水分補給が不可欠だ。





絶景のハイライト、達磨山へ




終盤が近づくと、視界の先に大きく広がるのが**達磨山**の丸い山容。その背後には、白く輝く富士山が堂々と構えている。冬の富士は雪化粧が美しく、まさに絵画のような風景だ。
達磨山への最後の登りは、この縦走のハイライト。ここまでの疲労が脚に残る中での登坂だが、山頂に立った瞬間、その苦労は一瞬で報われる。南には駿河湾、北には富士山。視界を遮るものは何もない。伊豆屈指の展望地と称される理由を、全身で実感する。
山頂からレストハウスまではまだ緩やかなアップダウンがある。西富士スカイラインには、ところどころで観光客の姿もあり、皆それぞれに景色を楽しんでいる。バイクでツーリングしている団体も何組かあった。19kmの道のりは決して短くないが、景色が常に変化するため、心理的な距離は意外と短く感じられた。
冬の伊豆山陵歩道の魅力

2月の伊豆は、雪の心配がほとんどなく、空気が澄み渡るベストシーズンのひとつだ。草原状の稜線は枯れ色に染まり、どこか寂寥感もあるが、それがまた冬山らしい趣を演出する。視界が開けている分、風の影響は受けやすいので、防寒対策は万全にしておきたい。
今回のコースは距離約19km、行動時間は休憩を含めて6〜7時間程度。体力的には中級者向けといえる。トレーニングを兼ねたロングハイクとしても最適で、持久力強化にはうってつけだ。一定のペースで歩き続ける能力、そしてアップダウンに対応する脚力が求められる。
歩き切った先にある充実感
ゴールの達磨山レストハウスに到着したとき、心地よい疲労感とともに大きな達成感が込み上げてきた。仁科峠から続く一本の稜線を、自分の足でつないだという実感。振り返れば、あのアップダウンの連なりが、確かな自信へと変わっている。
伊豆山陵歩道は、派手な岩場や鎖場はない。しかし、開放的な景色と長大な距離が織りなすスケール感は唯一無二だ。晴天の冬の日、富士と海を眺めながら歩く19kmの稜線。静かで、雄大で、そして確かに「歩きごたえ」のある一日だった。
次は季節を変えて、春の新緑や秋の澄んだ夕景も歩いてみたい。だが、冬晴れのこの一日は、きっと特別な記憶として心に残り続けるだろう。